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声優志望者必見!「人生経験の全てが芝居につながっている」伊瀬茉莉也さんトークショー in総合学園ヒューマンアカデミー
2014年11月23日
言葉に命を吹き込む声優という職業が表舞台でも注目を集めていることは言うまでもない。アニメ、吹き替えなど声の仕事をはじめ、歌手としてコンサートを行うなどさまざまな場面で脚光を浴びる声優に憧れ、プロを目指す人は全国に約30万人いると言われている。だが、デビューを果たしオーディションで役を勝ち得ながら業界で生き残ってゆくのは容易いことではない。そんな世界で芝居と真摯に向き合いマイクの前に立ち続けている声優の一人、伊瀬茉莉也さんによる声優志望者に向けたトークショーが行われた。
■伊瀬茉莉也(いせ・まりや)アクロスエンタテインメント所属。主な出演作品は『HUNTER×HUNTER』(キルア=ゾルディック役)『Yes! プリキュア5』(春日野うらら/キュアレモネード役)『TIGER&BUNNY』(ホァン・パオリン/ドラゴンキッド役)『惡の華』(仲村佐和役)。現在放送中のTVアニメ『七つの大罪』では、女性の騎士・ギーラを演じている。
■「声優になりたい」 一度決めたら揺るがない堅い決意
トークショーの会場は、村川梨衣さんや大亀あすかさんらをはじめ、数多くの声優を輩出している専門校、総合学園ヒューマンアカデミー。会場には在校生と将来声優になりたいと考えている若者が集まり、本校で講師を努める声優の森訓久さんの司会のもとイベントが進められた。
伊瀬さんがアニメの仕事に興味を持つきっかけとなった作品は、1997年に公開された『もののけ姫』だという。当時、小学3年生だった伊瀬さんは映画館へ8回も足を運ぶほど虜になり、「将来は、アニメ監督になって『もののけ姫』のような人に感動を与えるアニメを作りたい」と決意。その頃から映画やミュージカルを積極的に観て監督になるための勉強を始めていたそうだ。
その後、中学生になった伊瀬さんに人生を変える運命的な出会いが訪れる。フジテレビ系列で放送されていた『HUNTER×HUNTER』が大好きだった伊瀬さんは、その声優陣が演じるミュージカルの観覧に訪れていた。その会場で、偶然にもパンフレットに顔写真が掲載されていた舞台プロデューサーの姿を発見。伊瀬さんが彼に話しかけ進路を相談すると「僕はアニメも作っているから、君は将来声優になったら?」と声優養成所への入所を勧められたという。この出会いがきっかけで伊瀬さんは声優への道を歩み始めた。
入所した養成所のレッスンは毎週日曜の週に一度だけ。だが、伊瀬さんはレッスンのない平日をいかに過ごすかが重要だと考え、発声練習や滑舌よく話す訓練など基礎練習を徹底的に行なった。養成所ではシェイクスピアの演劇や、歌舞伎の「外郎売」を暗唱するレッスンをしたそうだ。「あの頃は正直、どうしてわざわざ台詞を暗記する必要があるんだろうって思ってたけど努力する姿勢や忍耐力は養成所で身につきました」と当時を振り返る。その後、デビューを果たしてからも自分の理解を超えた役を求められるなど壁にぶつかりながら奮闘の日々が続く。芝居を楽しいと思えるようになるまでには5年かかったという。
■“まず人であれ”全ての人生経験が芝居に生きる
声優は実写の俳優よりも演じる役の年齢や性別の幅が広い。時には、人間以外の役を演じる時もある。自分とはかけ離れたキャラクターの役作りは一体どのように行っているのだろうか。伊瀬さんは、TVシリーズで3年間演じた『HUNTER×HUNTER』のキルア役を例に挙げ、設定だけではなくキャラクターの感情を理解する重要性を指摘した。
「男の子の役だからといって声の高低差はそこまで重要ではないんです。それよりも大切なのはキャラクターの感情です。キャラクターの外側だけじゃなくて、その子の性格を見てキャラクターの気持ちを考えたら自然とその声になって来ます」と話す。伊瀬さんがキルアを演じた時は、キルアとしての気持ちを作り上げてから自宅で口にタオルを押し当て発声練習を行い適切な声のトーンを探ったそうだ。
伊瀬さんはキルアの役になりきるあまり、キルアの友達のゴンを演じた潘めぐみさんと劇中のキャラクター同士のようにしばしば言い争いをしたそうだ。また、別作品のアフレコ現場で潘さんを見かけると「どうしてゴンがここにいるの?と不思議な感覚を覚えるほどだった」と、ひとつの役を全力で演じ続けた3年間を振り返った。
キャラクターの気持ちを理解するための具体的な方法としては、映画や小説の役に自分を投影させ想像力を鍛えるという方法を挙げた。そして、人としての豊かさこそが地に足のついた演技をする上で欠かせないと続ける。「役者はいろんな経験をして自分自身を知らないと、他の人物を演じることは出来ません。自分が何に怒りや悲しみを感じているのかっていうことを、常に自問自答し続けて自分を研究することが必要です」と話した。
■新人声優が生計を立てていくのが難しいってホント?
参加者には伊瀬さんへ質問として事前アンケートが行なわれていた。そのなかから「ギャラは月に、いくらくらい貰ってるんですか?」という露骨な質問も飛び出した。そこで、伊瀬さんは声優の報酬制度について新人の誰もが経験する「ジュニア」クラスについての説明をした。
日本俳優連合に所属している声優は、デビューしてから3年間「ジュニア」という新人期間を経験する。ジュニア期間中の新人声優は所属事務所に関わらず出演報酬が一律15,000円に規定されており、番組制作関係者が新人を起用しやすいシステムになっている。新人は、このジュニア期間を通じて数々の現場を経験しながら名を売り表現者としての技術を身につけてゆく。
受け取った報酬から事務所にマネジメント料(※事務所によって異なる)を支払い、残った金額で生計を立てなくてはならない。そのため、仕事の本数が少ないうちはスケジュールの融通が利くバイトをしながら活動する新人も少なくない。
実力主義の厳しい現実を説明しながらも伊瀬さんは「人生は一度切りだから安全な生き方を選択するのも間違ってないと思う。でも、夢を持てた事そのものが素敵なことで夢を追いかければ叶う可能性も絶対についてくるはず。出来なかったらどうしようってマイナスな事を想像する前に期限を決めて挑戦してみて、精一杯やっても出来なかったら諦めたらいい」と会場の参加者へ熱いメッセージを送った。
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■声優専攻コースに在籍する学生の感想
トークショーの終了後、イベントに参加していた総合学園ヒューマンアカデミー大阪校のパフォーミングアーツカレッジに所属する田部由香梨さん(19歳)に感想をうかがった。
「最初から最後までためになる講演で、伊瀬さんの言葉にとても勇気づけられました。伊瀬さんがおっしゃるように、これから日々の生活における発見を大切にしたいと思います。私は歌うことが好きなのですが、声優になってから歌う機会もたくさんあると思うので自分を信じて頑張りたいです」。田部さんは来年の春に学校を卒業し上京する予定だという。
イベント終了後、伊瀬さんにトークショーについて振り返っていただいた。
――お疲れ様でした。先輩として声優を目指す人たちの間でお話をされてみていかがでしたか?
伊瀬:声優という職業に憧れを持って話を聞きに来てくれる人に会うことは私にとっても貴重な機会で、逆に皆さんからキラキラしたパワーをいただくことが多いです。仕事をしてしまっていると、業界内の難しい事や実践的な話をしてしまいがちなんですけど、自分が声優になろうと思ったきっかけや養成所にいた頃の話ができるのはこういう場ならではですし、皆さんにとっても得るものがあったらいいなと思って楽しくお話させていただきました。
――参加者の多くが学生ということもあって、あえて技巧的な事よりも心構えや精神面のお話をされたのでしょうか?
伊瀬:いえ、それは本当に私が大切だと思うことなんです。技術はやっていくうちに身につくものだと思うのですが、諦めない気持ちだったり、自分の中で燃えている気持ちは持とうとして持てるものではないと思うんです。その気持ちを持って、こうしてイベントに足を運んでくれる皆には、その気持ちをこれからも大切にして欲しいなと思っています。声優に限らず夢を持っている人にとっては、それが一番大切なことだと思って伝えたつもりです。
――講演では「人生経験が芝居に生きてくる」というお話をされていましたが、伊瀬さん自身がそれを感じた役はありますか?
伊瀬:もう、それは全部ですね。キャラクターたちが生きている世界は私たちが生きている世界とは全く違う、ファンタジーの世界だったりしますよね。そういう世界に入ってキャラクターの目線で追体験できることは声優ならではですが、そのキャラクターが持っている感情の根本は演じている役者の中からしか出ないものだと思います。なので、日々の生活の中でも何気なく過ごしていると見落としがちな感情の動きには、常に気を配っていますね。例えば、街を歩いている時も正面だけを見るんじゃなくて少し目線を上げてみる。すると、今日は空がきれいだなと感じたりして、日常生活の中からも自分にインプットできるものってたくさんあると思うんです。ちょっと意識するだけで普段の生活の中にも芝居に活かせるヒントがあるんじゃないかな。
――何か特別な事をするのではなく、日々の生活を充実させるということですね。やはり、私生活でも芝居のことは常に意識してしまいますか?
伊瀬:泣いている時や怒っている時でもどこかに冷静な自分がいて、人ってこうやって泣くんだな、とかは考えちゃいますね。役者の性ですかね。
――新しい役をもらった時も、声を考えるというよりも気持ちから作っていきますか?
伊瀬:最初は深く考え過ぎず作り過ぎず自分のインスピレーションのままにやったりしますね。自分なりにキャラクターを解釈してイメージする声を出してみて、それから音響監督さんの説明を受けて微調整していきます。
――10年近くのキャリアの中で、ターニングポイントとなった時期はありますか?
伊瀬:去年ですかね・・・。自分が思い描いていた声優という職業の理想と現実の違いが分かってきて、仕事している中で傷ついて悔しい思いをしました。自分の芝居に対してもフラストレーションっていうか、殻を破りたいと思ってふつふつしていた時期でしたね。そんな時に出会ったのが『惡の華』という作品でした。それが、普通のスタンドマイクを使って行うアフレコとは違って※ガンマイクを使っていて、あの挑戦はすごく自分の中で新しい風が吹きましたね。その現場で得たものとか始めてした経験は、レギュラーで続けている『HUNTER×HUNTER』の芝居にも活きましたし私の仕事に対する姿勢も変わりました。ターニングポイントは『惡の華』でしたね。
※ガンマイク…舞台やロケなどで使用される指向性の強いマイクロホン。『惡の華』のアフレコでは広範囲の音声を拾うことのできるガンマイクを使うことで、演者同士が向かい合う体勢となり臨場感あふれる掛け合いが行われた。
――劇中で伊瀬さんが演じられた仲村さんは、かなりエキセントリックな少女でしたが役柄の面でも影響を受けられましたか?
伊瀬:私自身の中にはいないキャラクターだったので、仲村さんを自分の中に取り入れるのに苦労しました。普段の生活から仲村さんになりきらないと演じきれなかったので影響はありましたね。『惡の華』を収録していた3ヶ月間は他の現場に行っても、マイク前に立って演じるという通常のアフレコが逆に違和感でした。
――では、最後にこれからどんな役者になっていきたいですか?
伊瀬:今はこんなふうになりたいとかは決めずに、やれることをしっかりとやっていって、プラス自分が学びたいことや吸収したいことをどんどんインプットする時期だと思っています。例えば、旅行したり映画とか舞台を観たりして、日々の生活の中で吸収したことを芝居の中で表現していける役者になりたいと思います。
日本語の正しいイントネーションや、さまざまな声を使い分ける技術は声優にとって不可欠だ。だが、伊瀬さんが声優を目指す人たちに伝えたかったのは、技術よりも演じるキャラクターの考え方や感情を理解しようと努めること。そして、なによりも「声優になりたい」という強い意志を持ち自分自身を信じることだった。声優として生きてゆく人生は険しい。だが、本気で取り組んだ人には必ず結果がついてくるのではないだろうか。伊瀬さん自身がそれを証明してくれているように。松田はる菜
ラベル:声優
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